子どもがゲームをやめられないとき、親はどうする?

言語聴覚士が解説する声かけと家庭ルール
ジースクで実際に改善した事例から考える、「禁止」より先にできること
先に結論
ゲームを終えられるようにする鍵は、強く叱ることよりも、「何時に終えるか」「どう閉じるか」「守れなかった翌日はどうするか」を先に決め、大人が同じ対応を続けることです。

8時だから、もう終わりにして

今は無理。あと1試合だけ!
同じ夜8時を見ているはずなのに、親子の会話がかみ合わないことがあります。
親が見ているのは、夕食や入浴、宿題、就寝へ続く“生活の時計”。
子どもが見ているのは、対戦の残り、建築の途中、仲間との約束といった“ゲームの時計”です。
親には「約束を無視された」と映り、子どもには「事情を聞かずに切られた」と響く。
このずれを放置したまま制限だけを強めると、ゲームを終える時間が、毎日の交渉や親子げんかの時間になってしまいます。
- 1. 親は時計を見ている。子どもは「途中」を見ている。
- 2. 「分かっているのに止められない」夜がある
- 3. ジースクで実際にあった「ゲームを終えられない」相談
- 3.1.1. Aさんの家庭で決めた4つのルール
- 4. ルールが崩れたのは、特別な日ではなく“今日だけ”から
- 5. 家庭とジースクの言葉を揃えた
- 6. なぜAさんの家庭では変化が起きたのか
- 6.1.1. いきなり全面禁止にしなかった
- 6.1.2. 終了時刻を交渉の外に置いた
- 6.1.3. 守れなかった翌日の対応を先に決めた
- 6.1.4. 家庭と支援側のメッセージを揃えた
- 7. 家庭で始めるなら、終了10分前を設計する
- 8. 親子の会話は「共感・境界・選択」の順に
- 9. 守れなかった夜は、説教より点検
- 10. ゲーム時間だけで「依存」と決めつけない
- 11. 今夜から使える家庭ルールのひな形
- 12. 目指すのは、ゲームを嫌いにさせることではない
- 13. ゲームの「好き」を、学びと成長へつなげるジースク
- 14. 次回予告|ゲームは本当に悪影響なのか
- 15. 参考情報
親は時計を見ている。子どもは「途中」を見ている。
マインクラフトで屋根を一段だけ残しているとき。フォートナイトの試合が終盤に入り、仲間と声を掛け合っているとき。
安全な場所へ戻らなければ、集めたアイテムを失うかもしれないとき。同じ「あと少し」でも、必要な操作も時間も違います。
「何分やったの?」と先に問えば、会話はすぐ取り締まりの形になります。
その前に知りたいのは、何をしているかよりも、何がまだ終わっていないかです。
「いま、何の途中?」
「次の区切りは、試合が終わるところ? 拠点へ戻るところ?」
「終了時刻までに、新しい試合へ入らず終えられそう?」
終点を言葉にすると、親はゲーム内の事情を把握でき、子どもも頭の中にしかなかった“終わり”を見える形にできます。
事情を聞くことは、延長を許すことではありません。決めた時刻に着地するための情報を集めることです。
「分かっているのに止められない」夜がある
楽しい行動を止め、約束を思い出し、残り時間を見積もり、終了操作を行い、悔しさを受け止める。
ゲームを終える数分間には、注意、記憶、切り替え、自己コントロールといった複数の力が使われます。
これらは実行機能と呼ばれ、子どもの時期に経験と周囲の支えを受けながら育っていく力です。
言語聴覚士は、子どもが発した言葉だけでなく、その言葉が出てきた状況にも目を向けます。
「待って!」の中に、「何を終えればよいか説明できない」「友達に抜けると言いにくい」「残り時間を見積もれない」が重なっていることもあります。
約束を理解していないのではなく、理解したことをその場の行動へ移すのが難しいのです。
曖昧な言葉を、確認できる約束へ
「あとちょっと」→ この試合が終わったら、新しい試合には入らない
「セーブできない」→ 拠点へ戻って保存したら終了する
「友達と遊んでいる」→ 終了時刻を先に伝え、あいさつをして抜ける
ジースクで実際にあった「ゲームを終えられない」相談
ジースクに通うAさん(仮名)のご家庭から、フォートナイトをなかなか終えられず、家庭内で対応に困っているという相談がありました。
当初は、「ゲームはジースクのレッスン時だけにする」という案も出ました。
けれど、Aさんはすでにバトルパスを購入し、本人なりに進めたい目標を持っていました。
昨日まで自由に遊べたものを、翌日からほぼ全面禁止にする。
それでは変化が急すぎて、ルールの意味よりも「取り上げられた」という感覚が前に出る可能性がありました。
そこで、ご家庭にはまず“1日1時間”の固定ルールから整えることを提案しました。
大切にしたのは、時間の数字だけではありません。
終わる時刻と、守れなかったときの扱いまで、始める前に決めておくことでした。
Aさんの家庭で決めた4つのルール
- フォートナイトは1日1時間。たとえば19時から20時までの1枠に固定する。
- 終了時刻になったら終了する。「あと1試合」「あと少し」を、その場の交渉で追加しない。
- 時間を守れなかった日は、罰として責めるのではなく、翌日はフォートナイトを休む“1日リセット”で調整する。
- 言葉づかいが荒くなったり、言い争いになりそうな空気が出たりしたら、その日は一度中断してクールダウンする。
この方法は、すべての家庭にそのまま当てはめるための正解ではありません。
Aさんの年齢、生活時間、ゲームの遊び方、ご家庭の困りごとを踏まえて決めた一例です。
ただし、「その日の気分で対応を変えない」「結果を事前に決める」という二点は、ほかの家庭でも応用しやすい考え方です。
ルールが崩れたのは、特別な日ではなく“今日だけ”から
家庭ルールは、大きな反発で一度に崩れるとは限りません。
むしろ入口になりやすいのは、親にも子にも理由がある、小さな例外です。
- 「今日は疲れているから、今日だけね」
- 「宿題をやったら延長していい」――ただし、どこまで終えたら達成かは曖昧。
- 「友達が今いるから、もう少しだけ」
- 「テスト前だけど、少しなら」
- 「あと1試合だけ」――その1試合が毎日の定番になる。
- 「今日は機嫌が悪いから、言うのはやめておこう」
どれも、その場では衝突を避けられる選択に見えます。
ところが例外が続くと、子どもは「頼み続ければ時間は動く」と学び、終了時刻のたびに交渉が始まります。
親も、断る理由を毎日考えなければなりません。これでは双方が消耗します。
例外を認めるなら、例外にもルールをつくる
例:週末だけ30分延長する/イベント参加日は終了時刻を事前に変更する。
その場で押し切られた延長ではなく、始める前に合意した変更にします。
家庭とジースクの言葉を揃えた
ご家庭だけにルール運用を任せるのではなく、ジースク側からもレッスン中に、「ゲームは時間を決めて楽しむこと」「勉強や生活も大切にすること」をAさんへ伝えました。
家庭では制限され、教室ではゲームだけを肯定される。
そんな食い違いが起きないよう、大人のメッセージを揃えたのです。
Aさんへ伝えた内容
「フォートナイトは毎日1時間。決めた1枠だけにしよう」
「時間を守れたら、明日も遊べる。守れなかったら、明日は1日休む」
「けんかを減らして、落ち着いて上手くなるためのルールだよ」
しばらくは声かけが必要でした。それでも、終了時刻も、守れなかった翌日の扱いも、大人の対応も変わらない。
Aさんは次第に見通しを持てるようになり、やがて決めた時間でゲームを終えられるようになりました。
一つの事例だけで、同じ方法がすべての子どもに効くとは言えません。
それでもAさんの変化から見えたのは、強い説教よりも、予測できるルールと一貫した運用のほうが、子どもが自分で切り替える足場になり得るということでした。
なぜAさんの家庭では変化が起きたのか
いきなり全面禁止にしなかった
本人がすでに持っていた目標や納得感を無視せず、まずは守れる大きさの1時間から始めました。
終了時刻を交渉の外に置いた
遊び始めてから条件を変えず、開始前に決めた時刻を毎日同じように扱いました。
守れなかった翌日の対応を先に決めた
その場で罰を考えるのではなく、事前に合意した“1日リセット”として淡々と調整しました。
家庭と支援側のメッセージを揃えた
親だけが悪役になる構図を避け、ジースク側も同じ考え方を本人へ伝えました。
家庭で始めるなら、終了10分前を設計する
Aさんのように終了時刻を固定しても、その瞬間まで新しい試合を始めていれば、「時刻だから切る」か「試合が終わるまで延ばす」かの衝突が残ります。
終了時刻を守るには、その10分前から“続きが増える入口”を閉じます。
- 10分前:終了時刻を確認し、「どこまでなら区切れそう?」と聞く。
- 5分前:新しい試合、建築、クエストを始めない。
- 終了時刻:保存する、仲間にあいさつする、ゲームを閉じる、機器を置く。
うまく終えられた日は、「ゲームをやめて偉い」だけで終わらせず、「新しい試合に入らなかったね」「友達に伝えて抜けられたね」「悔しかったけれど、時刻を守れたね」と、できた行動を具体的に返します。
親子の会話は「共感・境界・選択」の順に
子どもの気持ちを受け止めると、ルールが甘くなるのではないか。そう感じる方もいるでしょう。
しかし、共感と許可は同じではありません。
「盛り上がっているところだったね」――共感
「20時に終わる約束は変えないよ」――境界
「その時間までに、どこを終点にする?」――選択
最初から「約束したでしょ」と責めると、子どもの注意は“終わり方”ではなく“どう反論するか”へ向きます。
気持ちを一度受け止め、それでも境界は動かさず、残った時間の使い方を本人に選ばせる。
この順番なら、理解された感覚とルールの一貫性を両立できます。
守れなかった夜は、説教より点検
約束を守れなかった事実は、曖昧にしてはなりません。
ただし、落ち着いたあとに必要なのは、人格への評価ではなく、止まれなかった条件の点検です。
- 終了前の予告が遅すぎなかったか
- 終了時刻の直前に、新しい試合へ入っていなかったか
- 友達へ「今日はここまで」と伝える言葉に困っていなかったか
- 本人の見積もりと、実際に必要な時間にどれくらい差があったか
「なぜ守れなかったの?」では答えにくくても、「どこで予定とずれた?」なら、次の工夫を探しやすくなります。
ルール違反をなかったことにせず、失敗を翌日の設計へ変える聞き方です。
ゲーム時間だけで「依存」と決めつけない
長時間遊んでいる姿は心配になります。ただし、時間の長さだけで、すぐにゲーム障害と判断することはできません。
世界保健機関(WHO)は、ゲーム行動のコントロールが難しくなり、ほかの活動より優先され、悪影響があっても続き、本人の生活機能に重大な支障が生じているかを重視しています。
家庭で確認したいのは、『プレイ時間の数字だけでなく、その周りの生活』です。
- 睡眠不足や昼夜逆転が続いている
- 登校、学習、食事、入浴などが繰り返し成り立たなくなっている
- 以前楽しめていた活動や人との関わりが大きく減っている
- 課金やプレイ時間を隠す、暴言、物を壊すなどのトラブルが続いている
こうした変化が強い、長く続く、家庭だけでは対応が難しい場合は、小児科、児童精神科、学校の相談窓口などへ相談してください。急にゲーム時間が増えた背景に、学校でのつらさや対人関係の不安が隠れていることもあります。
ゲームを取り上げるだけでは、元の困りごとが残ってしまいます。
今夜から使える家庭ルールのひな形
「ゲームは毎日○時から○時までの1枠にしよう」
「終了10分前から、新しい試合には入らない」
「時間を守れたら明日も遊べる。守れなかったら明日は1日休む」
「言葉が荒くなったら、いったん止めて落ち着く」
「このルールは1週間続けて、日曜日に一緒に見直す」
最初から完璧なルールを作る必要はありません。
守れないほど厳しい制限を掲げて毎日崩すより、守れる大きさで始め、1週間後に見直すほうが、子どもも大人も変化を確かめられます。
ただし、見直す日までは、その場の交渉で動かさないことが大切です。
目指すのは、ゲームを嫌いにさせることではない
Aさんが身につけたのは、フォートナイトを諦める力ではありません。
好きなゲームを続けながら、決めた時刻に終え、翌日の生活へつなげる力です。
- 「いま、何の途中?」と聞く。
- 終点を決める。
- 新しい試合へ入らない。
- 必要なら仲間へ伝える。
- そして、約束の時刻に閉じる。
この一連の動きには、ことば、見通し、交渉、自己調整が詰まっています。
いつか大人に言われる前に、自分で「今日はここまで」と判断できるようになる。
その力は、コントローラーを取り上げた瞬間ではなく、ゲームを終えるまでの小さな会話の中で育っていきます。
ゲームの「好き」を、学びと成長へつなげるジースク
ジースクでは、ゲームを単なるごほうびや禁止の対象として扱わず、子どもの考え方や伝え方が見える学びの場として活用しています。レッスンでは、作戦を説明する、相手に助けを求める、役割を相談する、失敗したあとに立て直すといった力も大切にしています。
無料体験会では、お子さまが好きなゲームや興味に合わせてレッスンを体験できます。
保護者の方にもご覧いただけますので、「ゲームが好きな気持ちを、どのように成長へつなげられるだろう」と感じている方は、どうぞお気軽にご参加ください。
次回予告|ゲームは本当に悪影響なのか
ゲームには、挑戦、試行錯誤、協力を引き出す面があります。
一方で、睡眠や学習、気分、家族関係へ影響する遊び方もあります。
良い・悪いを分けるのは、時間なのでしょうか。内容でしょうか。
それとも、子どもを取り巻く環境なのでしょうか。
次回は「ゲームは本当に悪影響なのか」をテーマに、研究結果と言語聴覚士の視点を交えながら考えます。
参考情報
・世界保健機関(WHO)「Gaming disorder」|公式ページ
・Harvard University Center on the Developing Child「A Guide to Executive Function」|公式ページ
・American Academy of Pediatrics「How to Make a Family Media Plan」|公式ページ
※事例はプライバシー保護のため仮名とし、個人が特定されない範囲で一部の表現を調整しています。結果は一事例であり、同じ方法による改善をすべてのお子さまに保証するものではありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。

